季節の到来。
あの、君と初めてであった季節がまた来ようとしている。
初めて君の顔をみて、僕の心はいっぺんに君の色に染まった。
僕の人生に、こんな瞬間が来るなんて信じられない気持ち。
君は淡い、紫色だった。
とても可憐で、どこかミステリアスだった。
清楚でもあって、それでいて女性らしく艶っぽかった。
僕はきっと、そんなとき、
君の隣にいると君を引き立てさせることができるような、色をしていただろうか。
雪が降り出しそうな、グレーの空。
すべてのものが、ひっそりただひたすらに耐えている世界の中で。
白いコートを羽織っていた君は、
同じくらい白い顔に、うっすらピンク色をした頬の横顔をして、
急に僕に、何かを語りかけた。
うっとりするくらいに、素敵な、声で。
君を待っていた時間のせいで、
とっくにかじかんでしまった手を、気にしながら。
君は恥じらうこともなく、あたりまえに僕の手を握った。
僕はえらく不釣り合いではないか、そんな事に気を取られて、
君が思い切りの笑顔を僕にくれていたことに、気づかなかった。
やさしさとか、おもいやりとか、
あまり語り合わなかった時間が、過ぎていた。
朝の慌ただしさも、当たり前だったし、
僕らの忙しさも、二人のいる時間の普通だった。
いつしか、こんな当たり前の時間の中に二人はいれたんだね。
ぼくのため、きみのため、だれかのため。
将来があるから、僕らのどちらかが弱いから。
ふたりのなかに、そんな理由を探すこと自体が不潔なようで。
ただ、時間というものだけが過ぎていったのだ、と思うことこそ、
いまの、静かになった朝のくりかえしに、しっくり来る返事だ。
世界は、やさしく、
朝を僕にくれて、夜を僕に溶けさせてくれている。
白いコート。
淡い紫の色。
うっすらしたピンク色。
グレーの寒波に、君の姿はなんて、かけがえのない。
時間が過ぎたんだ。
じかんがすぎただけだよ、って。
千や万の理由なんて、全てウソになる。
理解をするなんて、滑稽な偽物になる。
あたりまえに、お互いを必要としていた時間だけが、
「 僕は、すべての時間の中で、君を感じられる 」
僕は、青色になった。
うっすら水色がかった、青色だ。